この著作はショートショート作品集ではないが、星新一の最初の著作ということで読んでみた。 今回読んだのは最初の一章で、人類が生命をどうとらえていたかを辿ったもの。概要なのでざっくりしているが、それぞれの時代のブレイクスルーになった発想が面白い…
「あとがきは原稿料が出ない。しかし、「あとがき」という作品にすれば原稿料が出るのでは」という発想からこの作品が作られた、という話を以前聞いた気がするのだが、出典がどこか覚えていない。もし見つかったら後日追記する。 この作品、メタ構造になって…
繰り返し構造の作品。こういう構造は星新一の作品にしばしば出てくる。同じようなストーリーが若い女、男、老人の順に少しずつ変化しながら繰り返される。こういう展開は音楽的な(変奏曲的な)感じがする。タイトルの「夜の流れ」も、「曲が流れる」という…
No.0070「美の神」と似た感じがする作品。異星文明とのファーストコンタクト物だが、異星人は既に存在せず、遺跡しか残っていない。遺跡の役割を解明するが、思いがけない結果になる。 鉱物採取用のロボットの格納庫という目的は人類にも理解できるが、何故…
現代(2021年)の「働き方改革」を思わせるような内容(ワークライフバランス的な意味で)。途中までは社員がリゾートマンションか何かを買って資産運用でもしているのかと思っていたが、意外な展開。忙しい本業の息抜きに副業というのはワーカホリックのよ…
盗んだ金の分け前を渡したくない気持ちはわかるが、相棒をはねてしまっては、その事件の捜査で足がついてしまい、逮捕されるのではないか?酔っているせいかも知れないが、行動が短絡的な感じがする。大体自動車で帰る前にバーで飲んでしまうところに昭和っ…
落ちの部分、肌の色が緑というのは、話の前半の植物の葉が緑でないという描写と合わせて考えると、この星では緑が希少で美しい色と認識されているのだろうか? この星の美の基準は、ある程度地球人と似ているようだ。顔立ちや声は地球人の価値観でも美しいと…
この話、壁から生えた腕より夫婦の方が怖い。泥棒に怯えている割に腕に対しては冷静なところがシュール。腕の方も攻撃的な行動は取らず、されるがまま。しかし次第に話が血生臭くなっていく。この腕が一体何だったのか、最後までわからない。不思議なホラー…
何やら現代(2021年)に起きているいろいろな事件を想起させられた。例えば以下のようなものだ。 ・日本で開発した品種が海外で勝手に栽培されて売られている。何の対策もしていなかったため、他国にシェアを奪われている。 ・大手種苗メーカーが、種をつけ…
極限的環境で何とか生き延びた遭難者。普通こういう場合は環境を改善して生き延びようとするものだが、この人は自分の意識を変えて環境に適応した。これは環境が改善しようにもできないくらい過酷だったからなのか、それとも彼の職業が神経科の医者だったか…
ポストアポカリプス作品。 この二人は次の世界のアダムとイブになるのか?それとも核戦争で被爆してしまい、未来が無いのか?男は不満タラタラだが、女は生活を楽しんでいるようにさえ見える。年下のイケメン(「美しい眉の下の目」という描写にイケメン感が…
この話はひねりが二つあると思った。一つは醜い怪物の正体が人間のような姿をしていること (この贈り主はどんな姿形をしているのだろうか?)、もう一つは空間的に遠くから贈られてきたのかと思っていたら、時間的に遠い未来から贈られてきたということ。一…
本人の知らない間に問題が解決してしまっているが、この場合K氏が借金を返済したことになるのだろうか?それとも強盗が立て替えた分を請求されるのか?その場合誰から請求されるのか?盗まれた人? ひとつの家のなかでほとんど全ての話が展開されるのは、星…
一読して大貫妙子の「メトロポリタン美術館」を思い出した。メトロポリタンは絵、こちらはテレビの中に閉じ込められるのだが。 作中に「ブラウン管」という表現があるが、これはこのまま残るのだろうか?星氏は作品に普遍性を持たせるため、「電話のダイヤル…
現代(2021年)のポイント制度を思わせる話。買い物のおまけでポイントをもらうのではなく、ポイントのおまけで商品をもらう世界。確かにポイントの有効期限が切れる前に、大して欲しくもない物を買ってしまうことがある。 本屋が無くなっている、というのは…
SF作品でタイムマシンはよくあるが、「タイムボックス」は初めて聞いた。 画期的な発明なのだが、現実に利用しようとするとコスト的に見合わない。こういう発明はよくありそう。画期的なエネルギーなのだが石油と比べるとコストが高くて普及しないという例は…
劣等感に悩む人類を救うために、「標準人間」という平均的人間のモデルを作り、幸福検定をする話。作中では電子頭脳が出てきたりとハードウェア寄りのシステムだが、現代(2021年)ではビッグデータとAIでソフトウェア的に実現しそうだ。 標準人間と会話する…
この作品では「文化」と言う言葉は出てくるが、「文明」という言葉は出てこない。「文化」というと必ずしも合理的、普遍的ではない特定の時期や地域固有の知の蓄積、「文明」は合理性や普遍性を持った知の蓄積という感じがするが、この作品では異星人にも伝…
社長も社員もけじめがつき過ぎていて面白い。それぞれの役割で言っていることはおかしくないのだが、それぞれの話が全く独立していて混じり合わない。何故これを読んでいて面白かったり奇異に感じてしまったりするのか? 親が担任するクラスの生徒にその人の…
「こわいおじさん」的存在が必要とされていても、なかなかその役割を引き受ける人がいない。これは、個人の資質の問題ではなくて、「こわいおじさん」を支える仕組みが崩壊しているからなのではないかと思う。こわい上司を演じようにも、パワハラ上司扱いさ…
元首は飾りのようなもので、いくらでも取り替えがきくという話。これは禅譲なのか放伐なのか?クーデターなので放伐のようだが、元首本人が辞めたがっているので禅譲のようでもある。 元首がお飾りで良いのは時代に関わらずなのだろうか?平穏な時代なら官僚…
この話の国は専制国家だが、民主的な体裁を対外的に保つため、「やらせ反政府運動」をやっている。国民のガス抜きといった国内向けの対策としてやっているわけではないようだ。 民主主義国家でも、市民運動のプロの方々が活躍されているが、彼らは何の目的で…
この作品を読んで最初に『アンドロイドは電気羊の夢を見るか』を思い出した。 『アンドロイドは電気羊の夢を見るか』は1968年刊行、『宇宙のあいさつ』は1963年刊行。『宇宙のあいさつ』の方が少し早い。しかし両作品の間に特に直接的な関係は無さそうだ。 …
冒頭と最後の一節は、謡曲「羽衣」からの引用で、さらに遡ると万葉集が元ネタらしい。こういう過去の文献に、未来人やら宇宙人を思わせる記述があるのは、ロマンと言うかセンス・オブ・ワンダーが感じられる。と同時にオカルト雑誌の記事にありがちな胡散臭…
偶然なのか、葉書の絵にサブリミナル効果でもあるのか、奇妙な夢を見てしまう話。欲望を無理矢理喚起しようとするところは「不景気」を想起させられる。 経済が成熟すると、欲しいものはほぼ手に入ってしまい、経済が頭打ちになる(いわゆる「先進国病」)と…
何だか壮大な話。「最後の地球人」を思い出した。創世記の「光あれ」の光は核の光なのだろうか? 話の途中で「みながこのような考えを持てば、争うことをしなくてもすむでしょうに。」と思える本を兵士が見つけるが、果たしてそうだろうか?その本が争いの元…
ノックの音から始まる星新一の作品は、『ノックの音が』という作品集でまとめられる程沢山ある。物語の本題に手っ取り早く入る方法として適当なのだろう。 星新一の一人称の作品というのは多いのか少ないのかよくわからないが、この作品は一人称。「N氏」の…
星新一作品によくあるバーが舞台の作品だが、女の子がいる店が舞台なのは珍しいのではないか。大抵は一人で飲んでいるとマスターなり隣の客なりが話しかけてくる展開なのだが。 夢にまつわる奇妙な話。毎晩リンゴをかじる 、夢は性欲と関係がある、手を出し…
悪くなることなど誰も望んでいないのに、何故か悪くなる景気。文明が成熟すると、購買意欲が飽和状態になり、経済が頭打ちになるのか。 「わたしだって、同じ本を二冊は買う気になれませんからね」とエス博士は言うが、オタクだったら同じ本を実用、保存用、…
ショートショートとしては結構長いが、最後の一行以外は全て会話。すごく饒舌で過剰なくらい想像力が豊かな被害者(途中で立場が逆転するが)。こういう会話で構成された作品も、星作品の中には色々あるようだ(「町人たち」等)。 善良な市民が善良な市民という…