レトルト工房 ~錬金術師の仕事場~

個人サークル「レトルト工房」のブログです。現代科学の最後尾を独走中です。

一日一星 No.0002 「薄暗い星で」『悪魔のいる天国』

理詰めの展開で最後に落ちがあるという定番のショートショートとは別系統の叙情的短編。こういう系統の作品も星新一には少なからずある。
死という概念が無い存在の死。それがどんなものかは人間には想像できない。作中のロボットが、なぜ人間が死を恐れるのかを想像できないように。
人間の死と、死という概念が無い存在の死との違いは何だろうか?人間以外の動物も、死を避けるために逃げたり戦ったりする。違いは、人間は墓や像や碑のようなモニュメントを残そうとするところだろうか?人間は、モニュメントを残すことで、何をしようとしているのだろうか?
モニュメント以外でも、人間は言葉で死をあらわそうとする。お祈り、詠唱、鎮魂歌のように。ロボット達が最期に「さよなら」と別れを告げたのは、お互いへの鎮魂の言葉だったのかも知れない。それならば、読者は死の概念が誕生する瞬間を見たことになるのではないだろうか。