レトルト工房 ~錬金術師の仕事場~

個人サークル「レトルト工房」のブログです。現代科学の最後尾を独走中です。

一日一星 No.0008 「大転換」『かぼちゃの馬車』

全国民がひょんなことから幽霊になったら実質無敵になってしまったという話だが、この思考実験で星新一は何を書きたかったのだろうか?
ホッブスは『市民論』や『リバイアサン』で、自然状態では万人が万人と争わなくてはならず、そういうのはしんどいから社会契約を結ぼうと言った。これは対象が人間なら成り立つが、幽霊だったら成り立たない。無敵の幽霊とは争えないし、幽霊の方も争いたくても武器を持てないので攻撃できない。そういう意味では人畜無害なのだが、目に見えるだけにそんな連中にぞろぞろ観光しに来られたら、来られた方はあくせく働くのが嫌になるだろう。こういう価値観の大転換を星新一は書きたかったのではないだろうか。