レトルト工房 ~錬金術師の仕事場~

個人サークル「レトルト工房」のブログです。現代科学の最後尾を独走中です。

2020-01-01から1年間の記事一覧

一日一星 No.0059「反応」『宇宙のあいさつ』

この作品では「文化」と言う言葉は出てくるが、「文明」という言葉は出てこない。「文化」というと必ずしも合理的、普遍的ではない特定の時期や地域固有の知の蓄積、「文明」は合理性や普遍性を持った知の蓄積という感じがするが、この作品では異星人にも伝…

一日一星 No.0058「けじめ」『だれかさんの悪夢』

社長も社員もけじめがつき過ぎていて面白い。それぞれの役割で言っていることはおかしくないのだが、それぞれの話が全く独立していて混じり合わない。何故これを読んでいて面白かったり奇異に感じてしまったりするのか? 親が担任するクラスの生徒にその人の…

一日一星 No.0057「こわいおじさん」『だれかさんの悪夢』

「こわいおじさん」的存在が必要とされていても、なかなかその役割を引き受ける人がいない。これは、個人の資質の問題ではなくて、「こわいおじさん」を支える仕組みが崩壊しているからなのではないかと思う。こわい上司を演じようにも、パワハラ上司扱いさ…

一日一星 No.0056「クーデター」『だれかさんの悪夢』

元首は飾りのようなもので、いくらでも取り替えがきくという話。これは禅譲なのか放伐なのか?クーデターなので放伐のようだが、元首本人が辞めたがっているので禅譲のようでもある。 元首がお飾りで良いのは時代に関わらずなのだろうか?平穏な時代なら官僚…

一日一星 No.0055「反政府省」『だれかさんの悪夢』

この話の国は専制国家だが、民主的な体裁を対外的に保つため、「やらせ反政府運動」をやっている。国民のガス抜きといった国内向けの対策としてやっているわけではないようだ。 民主主義国家でも、市民運動のプロの方々が活躍されているが、彼らは何の目的で…

一日一星 No.0054「期待」『宇宙のあいさつ』

この作品を読んで最初に『アンドロイドは電気羊の夢を見るか』を思い出した。 『アンドロイドは電気羊の夢を見るか』は1968年刊行、『宇宙のあいさつ』は1963年刊行。『宇宙のあいさつ』の方が少し早い。しかし両作品の間に特に直接的な関係は無さそうだ。 …

一日一星 No.0053「羽衣」『宇宙のあいさつ』

冒頭と最後の一節は、謡曲「羽衣」からの引用で、さらに遡ると万葉集が元ネタらしい。こういう過去の文献に、未来人やら宇宙人を思わせる記述があるのは、ロマンと言うかセンス・オブ・ワンダーが感じられる。と同時にオカルト雑誌の記事にありがちな胡散臭…

一日一星 No.0052「初夢」『宇宙のあいさつ』

偶然なのか、葉書の絵にサブリミナル効果でもあるのか、奇妙な夢を見てしまう話。欲望を無理矢理喚起しようとするところは「不景気」を想起させられる。 経済が成熟すると、欲しいものはほぼ手に入ってしまい、経済が頭打ちになる(いわゆる「先進国病」)と…

一日一星 No.0051「その夜」『宇宙のあいさつ』

何だか壮大な話。「最後の地球人」を思い出した。創世記の「光あれ」の光は核の光なのだろうか? 話の途中で「みながこのような考えを持てば、争うことをしなくてもすむでしょうに。」と思える本を兵士が見つけるが、果たしてそうだろうか?その本が争いの元…

一日一星 No.0050「解決」『宇宙のあいさつ』

ノックの音から始まる星新一の作品は、『ノックの音が』という作品集でまとめられる程沢山ある。物語の本題に手っ取り早く入る方法として適当なのだろう。 星新一の一人称の作品というのは多いのか少ないのかよくわからないが、この作品は一人称。「N氏」の…

一日一星 No.0049「リンゴ」『宇宙のあいさつ』

星新一作品によくあるバーが舞台の作品だが、女の子がいる店が舞台なのは珍しいのではないか。大抵は一人で飲んでいるとマスターなり隣の客なりが話しかけてくる展開なのだが。 夢にまつわる奇妙な話。毎晩リンゴをかじる 、夢は性欲と関係がある、手を出し…

一日一星 No.0048「不景気」『宇宙のあいさつ』

悪くなることなど誰も望んでいないのに、何故か悪くなる景気。文明が成熟すると、購買意欲が飽和状態になり、経済が頭打ちになるのか。 「わたしだって、同じ本を二冊は買う気になれませんからね」とエス博士は言うが、オタクだったら同じ本を実用、保存用、…

一日一星 No.0047「悪人と善良な市民」『宇宙のあいさつ』

ショートショートとしては結構長いが、最後の一行以外は全て会話。すごく饒舌で過剰なくらい想像力が豊かな被害者(途中で立場が逆転するが)。こういう会話で構成された作品も、星作品の中には色々あるようだ(「町人たち」等)。 善良な市民が善良な市民という…

一日一星 No.0046「宇宙の男たち」『宇宙のあいさつ』

冒頭の宇宙描写、 「操縦席の前にある窓の外には、静寂で透明な暗黒が限りなくひろがっていた。そして、その果てには数えきれぬ星々が散っていた。虹を凍らせて砕き、ちりばめたとも思えるほど、色とりどりの星々が。」 は、「気まぐれな星」と同様、星作品…

一日一星 No.0045「プレゼント」『ボッコちゃん』

送り主の意図とは違う反応が起きてしまったが、結果的に目的は達成したという話。「終わり良ければ全てよし」「結果オーライ」ということだが、これでうまく行くと勘違いしてしまったら、同じ状況が発生したときに同じ対応をとってしまい、思わぬ展開になる…

一日一星 No.0044「被害」『ボッコちゃん』

金回りが良くなったのは何かを得たからだという思い込みから強盗に入り、貧乏神を背負い込んでしまった話。普通、先入観や思い込みは排除して物事を考えるべきだと思いがちだが、科学の実験で行う手順の「仮説、実験、考察」の流れで言うと、先入観や思い込…

一日一星 No.0043「対策」『宇宙のあいさつ』

星新一の作品で、女性が主人公の作品は、あるにはあるがそんなに多くないと思う。「ボッコちゃん」「殺し屋ですのよ」「小さくて大きな事故」…と挙げてみたが、主要登場人物ではあっても主役かどうかは微妙な作品もあるかも知れない。女性で「N氏」のような…

一日一星 No.0042「気まぐれな星」『宇宙のあいさつ』

星新一の作品に出てくる宇宙は「暗黒」で、「星が凍りついている」という描写がしばしば出てくる。一昔前の宇宙は紺色や暗い青で、星が瞬いていた。これはおそらく地球から見上げた夜空をイメージしているから青っぽく見え、大気を通して見るから瞬いて見え…

一日一星 No.0041「ジャックと豆の木」『宇宙のあいさつ』

「ジャックと豆の木」、有名な話だが、どんなストーリーだったか覚えていない。天まで届く豆の木を登っていくシーンだけは頭に浮かぶのだが…。 パーラ星人は、ジャックを地上に帰してやるし、お土産に鳥までくれる良い奴。ジャックはしょうもない奴だが、少…

一日一星 No.0040「危機」『宇宙のあいさつ』

危機というのは未然に防いでしまうと、助けてもらってもありがたみが感じられない。それどころか、危機に瀕していたことも気づかないまま、代わり映えの無い日常として過ぎ去ってしまう。「鼓腹撃壌」という言葉があるが、「帝力何ぞ我に有らんや。」と言っ…

一日一星 No.0039「小さくて大きな事故」『宇宙のあいさつ』

小さなことから完全犯罪が崩壊する話はしばしば見るが、小さな事故で完全犯罪が成立してしまう話は初めて読んだ。「頭は少し弱いが正直な男」の動向によってはこの完全犯罪も危うくなりそうだが、この作品ではそこまでの展開は書かれていない。 このタカリ男…

一日一星 No.0038「貴重な研究」『宇宙のあいさつ』

科学的なような幻想的なような話。 不老不死の話は少なからずあるが、昆虫の変態をモデルにした不老不死の話は初めて読んだ。私が知らないだけで他にもあるのかも知れないが。昆虫がイモムシ➡️サナギ➡️成虫に変態するのはほとんど別の生物になるくらいの変化…

一日一星 No.0037「願望」『宇宙のあいさつ』

願い事を叶える系の作品。このタイプの作品の叶えてやる側は何が多いのか?悪魔が多そうだが、天使とか妖精とかもありそうだ。この作品では狐だが。 これと似た作品に「質問と指示」がある。 「もういい。どこかへ行ってしまってくれ」という指示に従って、…

一日一星 No.0036「宇宙のあいさつ」『宇宙のあいさつ』

作品の内容とは関係ないが、「あざやかな赤い色のボタンが、軽く押された。」のような英文翻訳調の言い回しは、この作品が書かれた時は普通の表現だったのだろうか(普通の日本語の表現では「ボタンを押した」だと思う)?海外文学作品の影響だろうか?何故受…

一日一星 No.0035「タバコ」『宇宙のあいさつ』

ものすごく逆効果な禁煙法。作中では薬の作用を色盲で例えているが、感覚器(目)側ではなく脳の情報処理の過程でタバコに関する情報をマスキングしている感じがする。ケイ氏は前日薬を飲んだことを忘れているが、これは偶々なのか、これも薬の作用のひとつな…

一日一星 No.0034「適当な方法」『宇宙のあいさつ』

この青年は、均一で健全な社会に不満を持ち、不満感の解消を国家に要求しているが、管理社会に不満を持っている人間が国に面倒を見てもらおうという発想が既に管理社会にどっぷり浸かっている人間の発想ではないかと思う。 医師の治療によりこの青年は社会に…

一日一星 No.0033「事実」『かぼちゃの馬車』

事実であることを証明するためには、リスクを引き受ける必要がある。相手が吸血鬼だった場合、そうでなかった場合、それぞれ自分が吸血鬼になったり、殺人犯になったりする可能性がある。相手に何かを働きかけるとき、働きかける方は第三者ではなく、当事者…

一日一星 No.0032「交代制」『かぼちゃの馬車』

「常識」(『かぼちゃの馬車』)と似た作品。「常識」はドッペルゲンガーが7人出てきたが、「交代制」は3人目に仲裁役が現れた(ただし体は3人で共用)。この仲裁役は薬の作用で発生したのだそうだが、この人格は複数に別れた人格をひとつに統合するために現れた…

一日一星 No.0031「治療後の経過」『かぼちゃの馬車』

iPS細胞を思わせる再生医療の話。 この話は「外見」(『かぼちゃの馬車』)と対になる話だと思う。「外見」の方は体が壊れてしまい、脳を機械の体に移植する。「治療後の経過」は無傷な体から頭を再生する。「外見」は見た目は以前と似ても似つかないが、人格…

一日一星 No.0030「新しい遊び」『かぼちゃの馬車』

ロボットを戦わせる競技なら、今でもロボ1がある。ただ、ルールがあるし、自動で戦うわけではなく人間が操作する。いずれはAI搭載のロボットが戦う時代が来るかも知れない。これからはAIとロボットの発達で人間の仕事が半分になると言われているが、次第にこ…