レトルト工房 ~錬金術師の仕事場~

個人サークル「レトルト工房」のブログです。現代科学の最後尾を独走中です。

一日一星 No.0076「一、生命についての考え方の歴史」『生命のふしぎ』

この著作はショートショート作品集ではないが、星新一の最初の著作ということで読んでみた。
今回読んだのは最初の一章で、人類が生命をどうとらえていたかを辿ったもの。概要なのでざっくりしているが、それぞれの時代のブレイクスルーになった発想が面白い。ここから視野を広げて哲学や医療や錬金術等の歴史を学んでみたくなる。現代人から見ると当たり前のようなことに過去の多くの人が頭を悩ませているが、未来人から見れば現代人も思わぬところでつまづいたり遠回りをしていたりするのだろう。

一日一星 No.0075「あとがき」『宇宙のあいさつ』

「あとがきは原稿料が出ない。しかし、「あとがき」という作品にすれば原稿料が出るのでは」という発想からこの作品が作られた、という話を以前聞いた気がするのだが、出典がどこか覚えていない。もし見つかったら後日追記する。
この作品、メタ構造になっていることに途中まで気付かず、アルファ博士が出てきたところで「やられた」と思った。ここに書かれている「地球とかいう星の住民たちの実態」は、何ともため息が出るようなどうしようもないものだが、これが地球という環境での生存競争の結果なのだから、なにがしかの意味があるものなのだろう。それが「ちょっとばかりだが、面白い点」なのかもしれない。

一日一星 No.0074「夜の流れ」『宇宙のあいさつ』

繰り返し構造の作品。こういう構造は星新一の作品にしばしば出てくる。同じようなストーリーが若い女、男、老人の順に少しずつ変化しながら繰り返される。こういう展開は音楽的な(変奏曲的な)感じがする。タイトルの「夜の流れ」も、「曲が流れる」というような音楽的なイメージを意識してつけたのではないだろうか。

一日一星 No.0073「砂漠の星で」『宇宙のあいさつ』

No.0070「美の神」と似た感じがする作品。異星文明とのファーストコンタクト物だが、異星人は既に存在せず、遺跡しか残っていない。遺跡の役割を解明するが、思いがけない結果になる。
鉱物採取用のロボットの格納庫という目的は人類にも理解できるが、何故ピラミッド型なのかはわからない。何か意味があるのか?考えてみるとピラミッドも何故あの形なのかわからないが。
「美の神」でも「艇長」という言葉が使われていたが、「船長」とは違う役職なのだろうか?乗り物は「ロケット」「宇宙船」という言葉が使われている。「艇」は小型の船、「船」は小型も大型も含めた船一般を指すようだが、これらの作品内での使い分けはよくわからなかった。

一日一星 No.0072「奇妙な社員」『宇宙のあいさつ』

現代(2021年)の「働き方改革」を思わせるような内容(ワークライフバランス的な意味で)。途中までは社員がリゾートマンションか何かを買って資産運用でもしているのかと思っていたが、意外な展開。忙しい本業の息抜きに副業というのはワーカホリックのような感じがするが、暇をもて余すタイプの人にはいい気分転換になるのだろうか。
それにしても、普段具体的な人名を出さない星新一が「山崎和彦」という名前を登場人物につけたのは、何か意味があるのだろうか?奇妙な社員を追跡する過程で具体的な名前が必要だと考えたのかも知れないが、いつも通りに「N氏」でも良いような気がする。

一日一星 No.0071「ひとりじめ」『宇宙のあいさつ』

盗んだ金の分け前を渡したくない気持ちはわかるが、相棒をはねてしまっては、その事件の捜査で足がついてしまい、逮捕されるのではないか?酔っているせいかも知れないが、行動が短絡的な感じがする。大体自動車で帰る前にバーで飲んでしまうところに昭和っぽい大らかさ(あるいはいい加減さ)を感じる。給料を現金輸送車?で運ぶところも昭和っぽい。
ところでこの相棒は、自分が幽霊になってしまったことを自覚しているのだろうか?中盤で主人公と会話しているシーンでは生き延びたつもりでいるように見えるが、ラストでは当たり前のようにドアを通り抜けて入ってくる。本人の意志というより、呪いの穴の呪力に突き動かされているのだろうか。

一日一星 No.0070「美の神」『宇宙のあいさつ』

落ちの部分、肌の色が緑というのは、話の前半の植物の葉が緑でないという描写と合わせて考えると、この星では緑が希少で美しい色と認識されているのだろうか?
この星の美の基準は、ある程度地球人と似ているようだ。顔立ちや声は地球人の価値観でも美しいと感じられるような変化をしている。美の基準が地球人のそれと全く異なっていたら、もっとまずいことになっていただろう。そもそも美の価値観というのは普遍的なものなのだろうか。それとも環境などの要因で変わるものなのだろうか。