レトルト工房 ~錬金術師の仕事場~

個人サークル「レトルト工房」のブログです。現代科学の最後尾を独走中です。

2020-11-01から1ヶ月間の記事一覧

一日一星 No.0058「けじめ」『だれかさんの悪夢』

社長も社員もけじめがつき過ぎていて面白い。それぞれの役割で言っていることはおかしくないのだが、それぞれの話が全く独立していて混じり合わない。何故これを読んでいて面白かったり奇異に感じてしまったりするのか? 親が担任するクラスの生徒にその人の…

一日一星 No.0057「こわいおじさん」『だれかさんの悪夢』

「こわいおじさん」的存在が必要とされていても、なかなかその役割を引き受ける人がいない。これは、個人の資質の問題ではなくて、「こわいおじさん」を支える仕組みが崩壊しているからなのではないかと思う。こわい上司を演じようにも、パワハラ上司扱いさ…

一日一星 No.0056「クーデター」『だれかさんの悪夢』

元首は飾りのようなもので、いくらでも取り替えがきくという話。これは禅譲なのか放伐なのか?クーデターなので放伐のようだが、元首本人が辞めたがっているので禅譲のようでもある。 元首がお飾りで良いのは時代に関わらずなのだろうか?平穏な時代なら官僚…

一日一星 No.0055「反政府省」『だれかさんの悪夢』

この話の国は専制国家だが、民主的な体裁を対外的に保つため、「やらせ反政府運動」をやっている。国民のガス抜きといった国内向けの対策としてやっているわけではないようだ。 民主主義国家でも、市民運動のプロの方々が活躍されているが、彼らは何の目的で…

一日一星 No.0054「期待」『宇宙のあいさつ』

この作品を読んで最初に『アンドロイドは電気羊の夢を見るか』を思い出した。 『アンドロイドは電気羊の夢を見るか』は1968年刊行、『宇宙のあいさつ』は1963年刊行。『宇宙のあいさつ』の方が少し早い。しかし両作品の間に特に直接的な関係は無さそうだ。 …

一日一星 No.0053「羽衣」『宇宙のあいさつ』

冒頭と最後の一節は、謡曲「羽衣」からの引用で、さらに遡ると万葉集が元ネタらしい。こういう過去の文献に、未来人やら宇宙人を思わせる記述があるのは、ロマンと言うかセンス・オブ・ワンダーが感じられる。と同時にオカルト雑誌の記事にありがちな胡散臭…

一日一星 No.0052「初夢」『宇宙のあいさつ』

偶然なのか、葉書の絵にサブリミナル効果でもあるのか、奇妙な夢を見てしまう話。欲望を無理矢理喚起しようとするところは「不景気」を想起させられる。 経済が成熟すると、欲しいものはほぼ手に入ってしまい、経済が頭打ちになる(いわゆる「先進国病」)と…

一日一星 No.0051「その夜」『宇宙のあいさつ』

何だか壮大な話。「最後の地球人」を思い出した。創世記の「光あれ」の光は核の光なのだろうか? 話の途中で「みながこのような考えを持てば、争うことをしなくてもすむでしょうに。」と思える本を兵士が見つけるが、果たしてそうだろうか?その本が争いの元…

一日一星 No.0050「解決」『宇宙のあいさつ』

ノックの音から始まる星新一の作品は、『ノックの音が』という作品集でまとめられる程沢山ある。物語の本題に手っ取り早く入る方法として適当なのだろう。 星新一の一人称の作品というのは多いのか少ないのかよくわからないが、この作品は一人称。「N氏」の…

一日一星 No.0049「リンゴ」『宇宙のあいさつ』

星新一作品によくあるバーが舞台の作品だが、女の子がいる店が舞台なのは珍しいのではないか。大抵は一人で飲んでいるとマスターなり隣の客なりが話しかけてくる展開なのだが。 夢にまつわる奇妙な話。毎晩リンゴをかじる 、夢は性欲と関係がある、手を出し…

一日一星 No.0048「不景気」『宇宙のあいさつ』

悪くなることなど誰も望んでいないのに、何故か悪くなる景気。文明が成熟すると、購買意欲が飽和状態になり、経済が頭打ちになるのか。 「わたしだって、同じ本を二冊は買う気になれませんからね」とエス博士は言うが、オタクだったら同じ本を実用、保存用、…

一日一星 No.0047「悪人と善良な市民」『宇宙のあいさつ』

ショートショートとしては結構長いが、最後の一行以外は全て会話。すごく饒舌で過剰なくらい想像力が豊かな被害者(途中で立場が逆転するが)。こういう会話で構成された作品も、星作品の中には色々あるようだ(「町人たち」等)。 善良な市民が善良な市民という…

一日一星 No.0046「宇宙の男たち」『宇宙のあいさつ』

冒頭の宇宙描写、 「操縦席の前にある窓の外には、静寂で透明な暗黒が限りなくひろがっていた。そして、その果てには数えきれぬ星々が散っていた。虹を凍らせて砕き、ちりばめたとも思えるほど、色とりどりの星々が。」 は、「気まぐれな星」と同様、星作品…