レトルト工房 ~錬金術師の仕事場~

個人サークル「レトルト工房」のブログです。現代科学の最後尾を独走中です。

一日一星 No.0018 「超能力」『かぼちゃの馬車』

主人公が超能力で無双する話ではなく、思わぬ展開になってしまう話。誰もが自分の抱えている都合の悪いことをバラされやしないかと不安になって主人公を避けるのだが、この話と「薄暗い星で」の「人間というものは、だれもかれも大差ないな。それなのに、なんで、ああ私生活を他人に知られるのを、いやがるんだろう。」というセリフを比べて考えると面白い。
「薄暗い星で」の場合は第三者視点で見ているので似たり寄ったりの情報を隠そうとする人間の心理がわからない。しかし「超能力」の場合は、問題を抱えているのが当事者なので、ありふれた問題でもバレると自分が責任を負うことになる。その視点の違いによってプライバシーに対する考え方が異なるのではないか。
では「ナンバークラブ」の場合はどうだろう。プライベートな情報をクラブに提供しているのは本人で、ナンバークラブに入らないことは「プライバシーにこだわって、人生をつまらなくすごしている。」と考えている。この場合、情報の提供方法が「入会したあとは、ひと月ごとに新しい経験を電話で送り、つけたしてゆく。」という、自分が提供したい情報のみ提供する方法なので、当事者である主人公もプライバシーの開示に肯定的なのではないか。
「超能力」は本人の意志とは関係なくプライバシーを暴かれてしまうので「薄暗い星で」や「ナンバークラブ」のようなプライバシー観とは違った観点からプライバシーを見ている。現代(2020年)のビッグデータ活用社会は、どちらかというと知らないうちに個人情報が本人の意志とは違う形で「活用」されてしまっている社会なので、便利だと思いつつ不安な感じもするのではないか。