レトルト工房 ~錬金術師の仕事場~

個人サークル「レトルト工房」のブログです。現代科学の最後尾を独走中です。

一日一星 No.0053「羽衣」『宇宙のあいさつ』

冒頭と最後の一節は、謡曲「羽衣」からの引用で、さらに遡ると万葉集が元ネタらしい。こういう過去の文献に、未来人やら宇宙人を思わせる記述があるのは、ロマンと言うかセンス・オブ・ワンダーが感じられる。と同時にオカルト雑誌の記事にありがちな胡散臭さも感じられる。この話から、縄文時代の宇宙服っぽい遮光器土偶とか、ピラミッドパワーとか、ナスカの地上絵とか、大洗のうつろ舟伝説を思い出した。
一人称の、女性が主人公の作品。天女が主人公なので当然と言えば当然だが。星新一の作品の中では、一人称の女性主人公の作品はどれくらいの割合で存在するのか?
バーチャルな娯楽に飽き足らない主人公が、大金をかけてまでして求めていたのは何だったのか?
「あたしは時の扉を自分で押しあけ、過去そのものに触れてみたいの。」
「過去を肌で感じることができさえすれば、後悔はしないわ。」
と言うセリフから、リアルなものへの渇望が感じられる。最後の方で、彼女の住む未来世界が、地球環境の崩壊後に生き残った人達が再建した世界であることが明かされる。
彼女はこのわずかな時間で、求めていたものを得られたのだろうか。