レトルト工房 ~錬金術師の仕事場~

個人サークル「レトルト工房」のブログです。現代科学の最後尾を独走中です。

一日一星 No.0046「宇宙の男たち」『宇宙のあいさつ』

冒頭の宇宙描写、
「操縦席の前にある窓の外には、静寂で透明な暗黒が限りなくひろがっていた。そして、その果てには数えきれぬ星々が散っていた。虹を凍らせて砕き、ちりばめたとも思えるほど、色とりどりの星々が。」
は、「気まぐれな星」と同様、星作品にしばしば登場する暗黒の宇宙と凍りついた(瞬かない)星のイメージだ。これらは米ソの宇宙開発競争で得られた知見が影響しているのだろう。
無理をしてでも人をからかったり、人にからかわれたりする必要があるのは、彼らの関係が文化人類学で言う冗談関係にあたるのだろうと思う。
この話、読み進めている途中まではいい話のように感じていたが、老人が通信ロケットに自分が働いて得たお金を入れると言ったあたりから何やら不穏な感じがしてきた。署名の無い遺書とお金が地球に届くと、それは自分の息子だとお金の所有権を主張する自称遺族が続出するのではないだろうか?老人はそれをわかった上でお金を入れたのか、それともそんな意図はなかったのか、よく分からない。この青年が孤児だと言うのもはたして本当なのか…。
最後の「さよなら」という終わり方は、「薄暗い星で」を思わせる。こういう淡々とした最期が、宇宙の男たちの流儀なのだろうか。